将棋・タイトル戦の序列の決め方と歴史的経緯について

2016年の10月1日に藤井聡太三段があの”ひふみん”が保持していた、最年少プロ棋士の記録を実に64年ぶりに更新。

その後、29連勝等の大記録を打ち立て、社会現象にもなったことで、将棋に興味を持つ人が急速に広がりました。

中には、将棋のタイトル戦が沢山あるけど、序列がよくわからないというかたも少なくありません。

そこで、一応、将棋アマ有段者である筆者が将棋・タイトル戦の序列やその決め方、歴史等について、まとめてみました。



■将棋界の最新のタイトル戦の種類(2017年10月現在)

現在、将棋界でタイトル戦とされているものは、竜王戦、名人戦、王位戦、王将戦、棋聖戦、王座戦、棋王戦に2017年5月に新たにタイトル戦となった叡王戦の8つになります。

このうち、叡王戦は、プロ将棋史上初のネット企業主催によるタイトル戦です。
※女流将棋や若手棋士限定のタイトル戦は除く

■現在の将棋界のタイトル戦の序列について

①タイトル戦の序列は、賞金額で決定

将棋界のタイトル戦の序列については、主に賞金額によって決定されています。
現在は竜王>名人>叡王>棋王>王位>王座>王将>棋聖となっています。

このうち、竜王と名人については、ほぼ同格の扱いとなっていますが、序列ということでは、竜王が上になります。

これは竜王戦のほうが名人戦より、賞金額が大きいことによります。

つまり、歴史と伝統からは名人位のほうが格上とされていますが、現在の将棋界のタイトル戦の序列は賞金額の高低によって規定されているためです。

2017年5月に新たにタイトル戦となったばかりの叡王戦の序列が3番目となっているのも賞金額が多いため、歴史が浅くても上位にランクされているのです。

②竜王と名人について

過去、将棋界最高レベルと位置づけられている竜王と名人を同時に保持した棋士は、羽生善治棋聖と谷川九段の2人だけです。

この2人が新聞やテレビに対局者として登場したとき、その肩書は、羽生竜王・名人、谷川竜王・名人と表記されていたということからも竜王がタイトル戦の序列1位ということは間違いありません。

羽生は1996年に全タイトルを制覇して7冠となりましたが、その時の肩書も
羽生竜王・名人でした。

将棋界のタイトル戦において、竜王と名人は別格という位置づけです。

また、将棋のアマチュアにも初段、二段から六段まで段位がありますが

段位認定の賞状に署名するのは名人と竜王となっています。

③なぜ、賞金額で序列を決めるのか

将棋・タイトル戦の序列が賞金額で決められているのは、将棋のタイトル戦のスポンサーとなっている新聞社間のプライド等の問題があるからです。

ちなみにタイトル戦のスポンサーは、竜王戦(読売)、名人戦(朝日・毎日共催)、叡王戦(ドワンゴ)、王位戦(中日新聞他)、棋王戦(共同通信)、王座戦(日経)、棋聖戦(産経)となっています。

将棋・タイトル戦のスポンサーからすると、正直なところ自分の主催しているタイトル戦を序列1位にして欲しいとういう思いはどの社でもあります。

そのため、序列を権威や格といった主観が入りかねない基準で序列を決めると軋轢が生じてしまうため、単に賞金額の多少によって序列を決めているのです。

実際、下記のように竜王と名人についての序列に関わる騒動が読売新聞と将棋界で生じたことがあります。



■竜王と名人のタイトル戦の序列についての歴史的経緯

①名人位の格と序列1位とされていた時代

名人位は、慶長17年(1612年)に一世名人 初代大橋宗桂となって以降、当初は世襲制によって名人位が決められていました。

つまり、将棋の名人位は当初は、茶道における家元に似た存在でした。

その後、13世の関根名人から実力制、つまりその時点で最も強い棋士が名人位に就くようになり、以来、現在の佐藤天彦名人に至るまで将棋界で最も権威と歴史を誇るタイトル戦に位置付けられています。

また、タイトル戦における序列についても竜王戦が誕生するまで、1位とされていました。

②竜王戦の誕生でタイトルの序列に変動

竜王戦は、それまでタイトル戦として読売新聞主催で行われていた十段戦が発展してできた棋戦です。

読売新聞は、囲碁については名人戦を主催していました。

将棋の名人戦については、その当時毎日新聞が単独で主催していました。
現在は朝日新聞と毎日新聞の共催です。

読売は、竜王戦の賞金について、囲碁の名人戦より低い金額を設定しました。

これに対して、”囲碁名人戦と同じ金額にして欲しい”将棋界は猛反発。

この時、読売側は、”囲碁の名人戦は最高峰のタイトルとされているので賞金を高くしている、竜王戦を名人位と同格かそれ以上の序列に位置付けてくれるなら、同じ賞金額にする用意がある”と逆に提案したのです。

この読売側の提案に将棋界も同意。

以来、将棋のタイトル戦の序列について、将棋名人戦の賞金を常に上回ることを条件に竜王>名人という序列となっています。