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裁量労働制とは?簡単にわかりやすく説明★(残業代はどうなる?メリットとは?)

2018/03/05
 
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■裁量労働制とは?要するに何?

★裁量労働制とは?要するに

裁量労働制は、1987年の労働基準法改正により導入された制度です。

裁量労働制とは、”労働時間について、実際に働いた時間ではなく、事前に労働者(従業員)と使用者(経営サイド)の間で決めた”みなし労働時間”を基準にして賃金を支払う制度”のことを意味します。

現状では、裁量労働制は、弁護士等の資格を伴う専門職や企画書等の限られた業種に対象が絞られていますので、身近な制度とはいいい難いのが現状です。

たとえば、”みなし労働時間が8時間で設定されていたとして、特定の日に6時間、別の日に5時間で業務終了したとしても、どちらの日も8時間働いたもの”とみなされます。
逆に月末の最後の週が納期等で忙しく、”連日10時間働いたとしても”8時間しか働いていない”ととみなされます。

★みなし労働時間の決め方

みなし労働時間数の決定は、”通常の所定労働時間(一般的には8時間)”に設定されることが最も多いのが現状となっています。

★裁量労働制における2種類の業務型とは?

裁量労働制には、”専門業務型”と”企画業務型”の2種類の業務型があります。

当初は、”専門業務型”のみでしたが、1998年から、”企画業務型”も設定されました。
①専門業務型の具体例
研究所の研究員 システムエンジニア、デザイナー、コピーライター
ゲームソフトの制作、建築士、弁護士、弁理士、新聞等の記者職等

②企画業務型の具体例
大企業の本社で経営企画等の企画業務に携わる従業員
要するに工場労働者のように仕事の成果が必ずしも労働時間に比例するわけではないということで、”企画業務型”として専門業務型とは別の業務型として設定されました。

独立行政法人労働政策研究・研修機構が平成25年に全国の13,000事業場を対象に
”企画業務型裁量労働制の導入状況”を調べたところ、
制度導入の理由として、「労働者の創造力を高め、能力発揮を促す」(46.7%)
や「成果主義・業績評価制度導入の一環として」(35.0%)を挙げたということです。



■現行の一般的な労働制度との違いとは?

裁量労働制と現行の一般的な労働制度との違いをまとめると以下のようになります。

★労働時間について

裁量労働制=労使で決めた労働時間

一般的な労働制度=法定労働時間(1日8時間)

★残業代について

裁量労働制=みなし労働時間の設定によって、そもそも残業代自体が発生しません

一般的な労働制度=法定労働時間(1日8時間)を超えた労働時間に対して残業代を支払われる

★休日・深夜手当てについて

裁量労働制=一般的な労働制度と同様

一般的な労働制度=支払われる

■裁量労働制のメリットとは?

裁量労働制のメリットは、”何時に出勤して何時に帰るか”について自分の裁量で管理できるようになることです。

また、仕事の進め方についての時間配分についても自分でコントロールが可能ですので、家庭生活等のプライベートとの両立もしやすくなることもメリットといえます。

例えば、”子どもがいるワーキングマザーが外回りの合い間に一旦、子どもの幼稚園の送り迎えをした後に、再び仕事に戻り、得意客を訪問する”というような働き方も可能になります。

■裁量労働制のデメリットとは?

裁量労働制のデメリットは、”みなし労働時間より長時間労働となりがちになる”ことを防止する手だてがないことです。

現状では、専門業務型でも企画業務型でも、長時間労働となるかどうかは、どうしても直接的な上司等の指揮者・監督者次第とならざるを得ません。

労働協定を全く守らないようなブラック企業が、裁量労働制を”長時間労働させても残業手当を支払わないで済む制度”として都合の良いように解釈して、悪用する例も現に存在しています。

長時間労働を防ぐ公的な規制がない状況では、”みなし労働時間より長時間労働となりがちになるを完全には防げない”ので”現場任せて的になりがち”なことが裁量労働制のデメリットといえます。

■不動産大手、野村不動産の50代の男性社員が裁量労働制が原因で過労自殺

裁量労働制の違法な運用によって不動産大手の野村不動産の50代の男性社員が過労自殺したという事例が2018年3月に朝日新聞などで報じられました。

報道によれば、この男性は日常的に、契約トラブルへの対応で顧客や仲介業者からの呼び出しに追われており、2015年秋ごろから長時間労働が続き、頻繁に休日出勤もしていたということです。

体調を崩して2016年春に休職。復職したあとの2016年9月に自殺。
その後、遺族からの労災申請により、東京労働局が野村不動産の労働実態の調査し、”裁量労働制の違法適用”が発覚したとしています。

このように野村不動産のような大手企業でも裁量労働制を”長時間労働させても残業手当を支払わないで済む制度”として都合の良いように解釈して、悪用するということからも、”裁量労働制が長時間労働に結びつきやすく、賃金抑制の手段とされがち”という労働組合や民進党等の指摘は的を得ていると思います。



■労働組合がなぜ”働き方改革関連法案”で裁量労働制の対象分野拡大に反対しているのか

日本で最大の労働組合組織の連合は、”働き方改革関連法案”の中で”裁量労働制の対象拡大や一部専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度の導入する”ことが検討されていることに対して反対を表明しています。

連合の神津会長の談話から、裁量労働制の対象分野拡大の反対理由は以下の2つに集約されます。

①”働き方改革関連法案”はそもそも”長時間労働を抑制するための法案”なのに、”長時間労働につながりかねない裁量労働制を盛り込むこと自体が誤り

②裁量労働制は、”働く者が裁量権を持つ制度だが、実際には過労死や過労自殺が起きており制度が誤った運用をされている”ので対象拡大ではなく、運用の改善に注力すべき

連合の反対理由は、”働き方改革関連法案”と”裁量労働制”の関係性への疑問、”裁量労働制そのものへの懐疑”というもっともな理由で反対しています。

■経営側が裁量労働制の対象分野拡大に熱心な理由・背景

一方、経団連等の経済団体は、”働き方改革関連法案”の中で”裁量労働制の対象拡大や一部専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度の導入する”ことで、日本経済の弱点とされている”労働生産性の向上”に資するものとして賛成しています。

これまで、経営側がその導入に熱心だった従業員の労働や賃金に関わる制度としては”成果主義”があります。

成果主義が導入されて以降、労働者の賃金は伸び悩むようになりました。

気をつけなくてはいけないことは、経営側が賛成する制度は”経営側に有利な制度、要するに賃金を抑制しやすくなる制度”だからといっても過言ではありません。

ですので、裁量労働制について”労働生産性の向上の名を借りた賃金抑制的な”側面もあることに注意することが必要です。



■働き方改革関連法案に裁量労働制の適用業務の拡大を法案には盛り込まない意向に

政府は、今国会で審議中の働き方改革関連法案で”時間外労働の上限規制の導入や、裁量労働制の適用業務の拡大”を盛り込む方向で準備を進めてきました。

厚生労働省が行った、一般労働者と裁量労働制で働く人の労働時間の調査に誤りとみられる例が多くみつかった等のことから、2018年3月1日に働き方改革関連法案に裁量労働制の適用業務の拡大を法案には盛り込まない意向と報じられました。

ですので、論議を呼んでいた”裁量労働制の適用業務の拡大”は今国会では、見送られる公算となりました。

ただ、あくまでも”見送り”ですので、今後、また、形を変えて、裁量労働制の適用業務の拡大を法案として提案してくることは必至と思われます。

■まとめ

裁量労働制は、導入されて20年が経過していますので決して新しい制度ではありません。
今、焦点となっていることは、裁量労働制の対象分野を広げていき、生産性向上に結びつけようという動きが加速されていることにあります。

裁量労働制は、政府・経営サイドからは、”生産性向上”が主目的であるのに対し、従業員側は”ワークライフバランスに資する制度”、労働組合サイドは”長時間労働させられやすくなる制度”とそれぞれ、捉え方が異なっています。

裁量労働制という働き方に関する制度は、上記の3者がある程度、同じ方向性で考えないとうまく運用できず、失敗に終わるのではないかと思います。

働き方改革関連法案に裁量労働制の適用業務の拡大を法案には盛りこまれない見通しとなりましたが、いずれまた何らかの形で法案の中に盛り込まれてくることは確実です。

裁量労働制の対象拡大に,なぜ政府や経営サイドが熱心なのかよく考えたうえで、その議論の行方を注視していく必要がありそうです。




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